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R15 年齢制限にご注意ください。あまり明るい話ではないです。




 俺たちが通う四天宝寺中学は学校自体が寺の中にあり、そして大抵こういった宗教施設というものは、自然破壊が進む近年では中々困難であるが、往々として豊かな自然環境の中に建てられるものであるらしい。
そして今の俺はといえば、寺のある場所にしては例に漏れず割と恵まれた木々に囲まれた校舎の裏にある小さな山の腹で、でかい図体で気持ちよさそうに口を開けて眠るアホ面を見下げていた。
「おい、この腐れ陰毛頭」
「あだっ?!…何ね、白石。どぎゃんしたと?」
 容赦なく蹴り起こされ、土が付いた頬を擦りながらのそのそと緩慢な動きで身体を起こしたそいつは、またのほほんと首をかしげる。
「それはこっちのセリフや。今何時やと思っとんねん」
 千歳の姿が見えなくなったのは、まだ皆が弁当を食べるよりも前。そして今はといえば六時間目も終わり、それぞれ部活のユニフォームを纏った生徒が元気にグラウンドを駆け回っている時間だった。
「ん〜……三時五十二分ってとこっちゃね」
 これはお得意の才気煥発かただでさえ人並み外れて良いコイツの勘か、それとも口からでまかせなのか。その実際のところなど俺にはわかるはずもなく、更に言えばこの勘の鋭さに反して嫌味のひとつも通じない神経の図太さに苛立って、今度はその縮れ毛だらけの頭を思いっきりはたいてやった。(俺も本当の正しい時間など把握しておらず、それを誤魔化そうとした八つ当たりなどでは決してない) 「痛っ!もう、二回も叩くことなかろー?!」
 白石は意外と乱暴者たい、などとぼやくその目には、痛みからかうっすらと涙が滲んでいる。
「自業自得や!次部活サボったらそのチリチリ、上も下も燃やしてつるっつるにしたるからな」
 先程頭をはたいた勢いでむしった髪の毛数本をはらはらと散らす。しかしそのうちの一本が指に絡みついてなかなか落ちず、俺はまた舌打ちしたい気分になった。
「んん…白石は顔に似合わず品のないこつ言うけん」
ばってん嫌いじゃなかとよ、と千歳は笑った。
「お前なんかに好かれてもこれっぽっちも嬉しくないんやけどな」
 普段なら遥か上にあるはずの緊張感のない顔を見下しながら答える。コイツが普段からこれくらいの身長であれば、力でもって俺の思い通りに動かせるのだろうか。
「ほんなこつ、素直じゃなかねぇ」
 しかしそんな俺の考えもむなしく、下からでもそのたくましい腕に引っ張られれば、成長期ゆえ未熟さは残るが、同い年とは思えない厚さの胸板に倒れ込んでしまう。
「俺が寝とう時、周りに猫さんおったとよ?白石が来てびっくりしたけん、どっか行ってしもたばい」
千歳はがっかりだと言わんばかりに肩をすくめて、これみよがしにため息をつく。
「ああ、ついでに鰹節の袋も持っていきよったわ。お前、完璧餌の対象にしか思われてへんのやな」
 本当は野良に餌付けなどするなときつく怒ってやらなければならないところだが、今の俺は千歳に意地悪をしてやりたい気持ちの方が勝っていた。
 千歳と居るといつも、俺の心はささくれだつ。
「ええ〜…そぎゃんショックばい…俺の心は傷ついたけん、むぞらしか猫さんに慰めてほしかよ」
 腕を引かれ千歳の腿に跨る状態だった俺の腰をがっちりとホールドし、目の前の大型犬はすりすりと髪の毛に顔を擦り付けてくる。
「…前々から思っとったけど、お前、中三とか絶対嘘やろ」
 そこらのエロオヤジでも今時もうちょっと気の利いた誘い方をするのではないだろうか。唇の片端が意図せず上がったのと同時に、喰われる様にくちづけられた。
「ん、んぅ、ふっ…んぁっ」
厚みの違う舌を絡ませ、ぴちゃぴちゃと唾液が交る音が耳に響く。顔の角度を変えながら、互いにうっすらと開いた瞳がかち合った。才気煥発、絶対予告。未来さえをも見透かすような黒耀の瞳。今見つけたその瞳に宿る熱情の灯火を、同じように千歳も俺の中に見るのだろうか?
 唇が離れると、今度は骨ばった大きな掌がユニフォームの下から侵入してくる。何のふくらみもない胸を覆い撫で、背筋を下から上へなぞり這う指は情欲を焚きつけたいと言っていた。透けて見えたその仕草に、ああ、やはりコイツも年相応の青い子供なのだとそれこそ自分がジジイのような気分でおかしくなって、俺は太ももの付け根に当たっていた千歳の張りつめたものを解放してやるべくズボンのベルトに手をかけた。
「なあ千歳。俺はお前を許さんからな」
 すでに窮屈そうな前をくつろげ、馬鹿みたいに大きい千歳の性器を取りだす。いかにも雄くさいその竿を擦り、裏筋を撫で、先端をくにくにと捏ねるとすぐにぷくりと先走りの玉が滲んだ。今度はその先走りを塗り込むように亀頭全体をいじってやると、目の前ではぁっと快感を逃がすような息が零れた。刺激されれば興奮する男の身体。それは本当に機械的で、不便だけど便利だ。
「なぁ、謙也がどれだけ練習しとったか知ってるか?」
知らんやろな。お前、サボってばっかやもんな。機械的な仕草で千歳を追い上げながら、もう片方の手で後ろ手に自分の穴へ指を這わす。
「っぁ……あいつ、な、勝ちを、お前に託したんや。最後の大会、出たかったやろうに、お前に、んっ…あの時お前が勝っとったら、…はぁっ、謙也は、俺らは、まだ」
 いつだったか謙也は、いずれは医師である父の経営する医院を継ぎたいと言っていた。これは本人から直接聞いたわけではないが、医者になるというなら、高校に入れば勉強漬けになることは間違いない。謙也はあの時、もうすぐ置かなければならないラケットを握ることすら出来ずに、どんな気持ちでコートを眺めていたのだろう。
「…っ!ん、ぁっ」
 元々出口専用である穴に無理矢理指を突っこんでいるのだから上手くいかなくて当然だとは思うがやはり、自分と千歳の先走りの力を借りているものの、まだまだ慣らすと言うには及ばない。ゆっくりゆっくりと指を奥へ進めれば、予期せぬ異物に対して腸液でも分泌されたのか、少しだけ滑りが良くなった気がした。
「っふ、ぁっ…け、んやだけやない…俺かてそうや。今までお前が部活にも出んと好き勝手しとるのを黙認しとったのは」
 ぺろりと千歳の首筋を舐めると、うっすらとしたしょっぱさの中にふわりとけもののにおいがした。そしてその瞬間脳裏によみがえるのは、千歳の傍らで丸くなり、こちらを一瞥するとすぐに餌だけ持ってどこかへ行ってしまった、あの忌々しさすら感じるほどに吊り上がった大きな金目だ。
「お前のテニスが、うちに勝ちを運んでくると思っとったからや」
俺とアイツの何が違うと言えるだろう。自嘲から唇をつり上げ、下半身からにゅちにゅちと聞くに堪えない音を響かせながら千歳の顔を覗き込む。俺は、すべてを解った上で俺を猫と呼び愛でたがるコイツが、どうしようもなく憎かった。
「…なんであないないいテニスする奴のイレモノが、よりにもよってお前なんやろうな」
最悪、と言われた千歳もまた笑い、その様に思わず腹の底が熱くなる。性欲と暴力衝動が紙一重だとは誰の言葉だったか。一旦体勢を整える為に地面に手をつくと、爪の隙間に砂利が入り込んだ。
(ああ、こういうのって、後で取りにくいねんな)
皮膚と爪とのわずかな隙間に入り込み、どれだけ洗ってもほじくっても、正面から見れば根元には取りきれなかった汚れが残る。それはまさに今の自分だった。  謙也が自分で納得した上で、自らの意志で千歳に出場を譲ったこと。いくら自分本位だったとはいえ、千歳が負けようとして負けたわけではないこと。本当は心ではすべて解っている。けれど濾過しきれなかった醜い感情がこの砂利のように、先程の千歳の髪の毛のように、こびりついて離れない。部外者の自分だけが未だに未練たらしく劣情をくすぶらせているのは筋違いだということも、全部全部わかっているのだ。
 ぐっと腰を浮かせ、固定した千歳の性器を自分の穴へあてがう。
「…ハ、こんな状態で萎えへんなんて、俺もお前も大概スキモノやんなぁ」
もうすぐに、この熱く脈をうつ血と肉の塊が、俺の空っぽな中を埋め尽くす。
「なあ、お前はこれからずっと、ごめんなさいごめんなさいって思いながら俺を抱くんやで」
 千歳は、性器を突っ込んだ俺の穴を下から容赦なく突き上げた。互いの腹筋に擦りつけられる自らの性器と、剥き出しの膝が地面に擦れて痛い。そしてその獣じみた荒々しさに反して首に回した俺の手を取り、汚れた指先に慈しむように口づけてくる千歳が俺は世界で一番憎くて、愛しくて、そして哀れだった。

(20110410)